はじめに
画像や動画の「フォーマット」は、データを保存・配布する 容器(コンテナ) と、 内部で実際にピクセルや音声を圧縮する コーデック(エンコーダ) の組み合わせで成り立っています。 フォーマットを正しく選ぶと、ファイルサイズ・画質・互換性・編集しやすさが大きく変わります。
・非圧縮(BMP, 一部TIFF)… 劣化なし/巨大
・可逆圧縮 (Lossless)(PNG, WebP-lossless, FLAC, ProRes 等)… 劣化なしで多少小さく
・非可逆圧縮 (Lossy)(JPEG, WebP, AVIF, MP4/H.264 等)… 画質を少し犠牲に大幅に小さく
画像フォーマット
JPEG / JPG .jpg .jpeg
世界で最も普及している写真向けフォーマット。人間の視覚特性(明度には敏感、色差には鈍感)を利用した YCbCr色空間 + 離散コサイン変換 (DCT) + 量子化により、写真を1/10〜1/20に縮められます。
メリット
- 圧縮効率が高く、写真サイズが小さい
- あらゆる端末・ソフトで開ける
- EXIF(撮影情報)を埋め込める
デメリット
- 透過 (alpha) が無い
- 編集→保存を繰り返すたびに劣化(世代劣化)
- ロゴ・文字・線画ではブロックノイズが目立つ
用途: 写真、SNS投稿、ブログ画像、メール添付。
PNG .png
GIFの特許問題への対抗として誕生。DEFLATE 圧縮 による完全可逆。 スクリーンショット、ロゴ、UI素材、図表など シャープなエッジを持つ画像で本領を発揮します。
メリット
- 劣化ゼロ。何度保存しても同じ
- 透過 (alpha) を表現できる
- アンチエイリアスが綺麗に保たれる
デメリット
- 写真ではJPEGの3〜10倍サイズになる
- アニメーション非対応 (APNGは互換性が限定的)
用途: ロゴ、アイコン、UI画像、スクリーンショット、図解。
WebP .webp
Googleが開発したWeb向け汎用フォーマット。同等画質のJPEGより約 25〜35%、 可逆モードならPNGより約 26% 小さくできるケースが多いです。
メリット
- JPEG/PNGより小さく、表示が速い (Web高速化に有効)
- 透過もアニメーションも1つでカバー
デメリット
- 古いソフト・OSでは開けないことがある
- 印刷・DTP系ワークフローでは未対応のことも
用途: Webサイト・ブログ画像、PWA、アプリ内アセット。
AVIF .avif
次世代フォーマットの本命。同画質でJPEGの 1/2 〜 1/3、WebPよりも一段と小さくなります。 HDRや広色域、フィルムグレイン保持にも対応し、写真・サムネイルで威力を発揮します。
メリット
- 圧倒的な圧縮効率
- HDR / 10bit / 広色域対応
- 主要ブラウザがほぼ対応
デメリット
- エンコードが重い (CPU負荷大)
- 古いOS (iOS 15以前など)・ソフトでは未対応
用途: 高品質Web画像、CDN配信、写真アーカイブ。
HEIC / HEIF .heic .heif
Appleが採用したことで一気に普及。HEIF(コンテナ)の中にHEVC圧縮した画像を入れた形で、 JPEG比 約半分 のサイズで同等以上の画質を実現します。
メリット
- JPEGの半分のサイズで高画質
- 深度マップ・複数画像・編集情報を1ファイルに格納可
デメリット
- HEVCに特許ライセンス料が発生 (Web標準にならなかった理由)
- Windows標準では追加コーデック必要、Webブラウザ非対応
用途: iPhone標準写真。Web公開やWindows共有時はJPEG/PNG/WebPへ変換すると確実です。
GIF .gif
256色パレットによる古いフォーマットですが、短い動きのループとして今も現役。 ただしファイルサイズが大きく、写真には不向きです。
メリット
- どんな環境でもアニメーション再生できる
- SNS / チャットで自動再生される
デメリット
- 256色なので写真画質が荒れる (グラデーションでバンディング)
- 同等のWebM/MP4より大幅に重い
用途: 短いミーム、操作デモ、アイコン的なループ動画。
BMP .bmp
Windows由来の単純な構造。読み書きが軽いので組み込み機器・古いツールとのデータ交換に使われます。普段Web/SNSで使う必要はほぼありません。
TIFF .tif .tiff
印刷・出版・スキャン業界で長年使われてきた高画質フォーマット。CMYKやアルファチャネル、レイヤー情報まで含められる柔軟性が強み。 Web表示には向きません。
SVG .svg
ピクセルではなく数式・線・座標で図形を表すベクター形式。 どれだけ拡大しても綺麗なため、ロゴやアイコン、レスポンシブUIで重宝されます。CSSやJSで動かすことも可能です。
PDF .pdf
厳密には画像フォーマットではなくドキュメント形式ですが、複数の画像を1ファイルにまとめ、 印刷品質を保ったまま配布できるため、画像変換の出力先として人気です。
RAW .cr2 .nef .arw .dng …
デジタルカメラのセンサー出力をそのまま記録した形式。撮影後にホワイトバランス・露出を 劣化なしで再調整 できます。 配布や閲覧の前にJPEG/TIFFなどへ現像するのが基本ワークフローです。
画像フォーマット早見表
| フォーマット | 圧縮 | 透過 | アニメ | サイズ感 (写真) | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| JPEG | 非可逆 | × | × | ○ 小 | 写真全般 |
| PNG | 可逆 | ○ (8bit) | × | △ 大 | ロゴ・UI・スクショ |
| WebP | 両対応 | ○ | ○ | ◎ 小 | Web画像 |
| AVIF | 非可逆中心 | ○ | ○ | ◎◎ 最小級 | 高画質Web画像 |
| HEIC | 非可逆 | ○ | ○ | ◎ 小 | iPhone撮影 |
| GIF | 可逆 (256色) | 1bit | ○ | × 重い | 短いループ動画 |
| BMP | 非圧縮 | 限定 | × | ×× 巨大 | 古いWindows連携 |
| TIFF | 選択可 | ○ | × | ×× 巨大 | 印刷・スキャン |
| SVG | (ベクター) | ○ | ○ | ― (写真不可) | ロゴ・アイコン |
動画フォーマット
MP4 や MKV のような コンテナ(容器)の中に、映像コーデック(H.264, H.265, VP9, AV1 等)と 音声コーデック(AAC, MP3, Opus 等)が入っています。
同じ
.mp4 でも内部のコーデック次第で再生互換性は変わります。
MP4 .mp4
世界標準の動画コンテナ。「とりあえずMP4で出せば再生できる」と言ってよい安心感があり、 YouTube・Vimeo・SNS・スマホ・テレビ・ゲーム機など、ほぼ全環境で再生可能です。
WebM .webm
<video> タグでの配信を想定したロイヤリティフリーのWeb向けコンテナ。MP4より圧縮効率が良いことが多いです。
Apple系(古いSafari)の互換性は要注意。
MOV .mov
Apple QuickTime由来の業界標準。ProRes 等の編集向けコーデックを格納できるため、 映像制作・色補正のワークフローでは MOV のまま中間ファイルとして扱われます。配布時はMP4へ変換が定石です。
MKV (Matroska) .mkv
何でも詰め込めるオープンコンテナ。多言語音声・複数字幕・チャプターを1ファイルにまとめられるためコレクター・愛好家に人気。 スマホ標準アプリやSNSはほぼ非対応なので、配布時はMP4変換を推奨。
AVI .avi
古いPC動画の主役だったコンテナ。今では非効率なので、新規制作で選ぶ理由はほぼ無し。古い素材の取り込み時に遭遇することが多いフォーマットです。
M4V .m4v
FLV .flv
WMV .wmv
3GP / 3G2 .3gp .3g2
OGV / Ogg .ogv .ogg
TS / MPEG-TS .ts .m2ts
主要コーデック(中身)
| コーデック | 世代 | 圧縮効率 | 特許 / ライセンス | 主なコンテナ |
|---|---|---|---|---|
| H.264 / AVC | 2003〜 | ○ 標準 | 有 (実質的に解決済) | MP4, MOV, MKV, TS |
| H.265 / HEVC | 2013〜 | ◎ H.264比 -50% | 有 (複雑なライセンス) | MP4, MOV, MKV, HEIC |
| VP9 | 2013〜 | ◎ HEVC級 | 無 (ロイヤリティフリー) | WebM, MKV |
| AV1 | 2018〜 | ◎◎ 最小級 | 無 (ロイヤリティフリー) | MP4, WebM, MKV (AVIFも) |
| VP8 | 2010〜 | △ H.264相当 | 無 | WebM |
| MPEG-2 | 1995〜 | × 古い | 有 (失効) | TS, DVD-Video |
| ProRes | 2007〜 | 編集向け (大きめ) | Apple | MOV |
※ 「H.264 = MP4」と勘違いされがちですが、H.264はコーデック名であり、コンテナはMP4以外(MKV, MOV, TS等)にも入れられます。
シーン別おすすめフォーマット
用途別 (画像)
- SNS・ブログに写真を載せたい →
JPEG/ より小さく見せたいならWebPorAVIF - ロゴ・スクショ・UI素材 →
PNG(透過必要なら必須) - iPhoneで撮った HEIC をPCやWebで使いたい →
JPEGorWebPに変換 - 印刷・入稿 →
TIFFまたは高品質JPEG/PDF - 拡大しても綺麗にしたい (アイコン等) →
SVG - 複数枚をまとめて配布 →
PDF - 軽くて短い動きを貼りたい →
WebP (animated)>GIF(互換重視ならGIF)
用途別 (動画)
- YouTube / SNS / メッセージ送信 →
MP4 (H.264 + AAC)が最も無難 - 自社サイトに
<video>で埋め込む →MP4+WebMを併載するのが理想 - 編集用に高画質保存 →
MOV (ProRes)または高ビットレートMP4 - 多言語音声・字幕付きで保管 →
MKV - アニメGIFを軽量化したい →
WebM (VP9)やMP4 (H.264)に変換 (本ツールでも可能) - 古い動画 (FLV, WMV, AVI) → まず
MP4へ変換しておくのがおすすめ
サイズ vs 互換性 早見表
| 優先したいこと | 画像 | 動画 |
|---|---|---|
| とにかく互換性 | JPEG / PNG / GIF | MP4 (H.264 + AAC) |
| サイズを小さく | AVIF > WebP > JPEG | AV1 > H.265 > H.264 |
| 編集を続ける | TIFF / PNG / RAW | MOV (ProRes) / MKV |
| 劣化させたくない | PNG / TIFF | (ロスレスH.264 / FFV1) |
用語集
- コンテナ (Container) … 映像・音声・字幕などをまとめる「容器」。MP4, MKV, MOV など。
- コーデック (Codec) … データを圧縮・伸張する仕組み。H.264, H.265, AV1, AAC など。
- 非可逆圧縮 (Lossy) … 人が気づきにくい情報を捨ててサイズを大幅に縮める方式。JPEG, MP3, H.264 など。
- 可逆圧縮 (Lossless) … 元データを完全に復元できる圧縮。PNG, FLAC, ProRes 4444 など。
- ビット深度 (Bit Depth) … 1色あたりのビット数。8bit (一般)・10bit (HDR) など。
- クロマサブサンプリング (4:2:0 等) … 色差成分の解像度を下げて圧縮率を上げる手法。
- HDR (High Dynamic Range) … 明暗差の大きい映像表現。10bit以上が必要。
- ビットレート (Bitrate) … 1秒あたりのデータ量。高いほど画質が上がるがサイズ増。
- フレームレート (fps) … 1秒間のコマ数。映画24fps、TV 30/60fps、ゲーム60〜120fpsなど。
- キーフレーム (I-frame) … 単独で完結する全情報フレーム。ここからシーク可能。
- EXIF … 撮影日時・カメラ機種・GPSなどを画像に埋め込むメタデータ規格。
- ICC プロファイル … 色空間を正しく表示するためのカラーマネジメント情報。